2009年7月2日木曜日

こぼれ話1

(1)制動手(せいどうしゅ)

軽便鉄道の調査を始めて、聞きなれない言葉があった。セイドウシュという。今風に言えばブレーキ・マンとでも言えば分かりやすい。この話をしてくれた人たちは、昭和16年から20年にかけて国鉄に採用された人たちである。

当時、英語は敵性語ということで使えなかったのでしょう。今では考えられないような職種である。


北松浦郡の人口は今の数倍はいて、客車は満員、鈴なりなんてのも珍しくなかった。しかし、なんといってもこの付近の産業の中心は石炭で、貨車というかトロッコ列車が走る中を、たまに客車が通ると言う感じだった。

石炭貨物列車は15両連結が普通で、1列車に3人の制動手が乗っていた。下り坂になりスピードが上がったらハンドルを回して車輪にブレーキをかけていた。1人当たり5両を受け持っていたわけで、次々に飛び移ってブレーキをかけなければならなかった。ブレーキがかからなかったら後ろの車が押しやって、脱線することになるのだから、大変な仕事だったと思われる。

労働基準法なんてものはなかった時代、機関車のスピードも今よりは格段に遅かったので出来たことでしょう。ブレーキ片は一般に鉄製だったけど、木製のものもあったそうで慌てたとき、その木を押し付けると熱のため燃やしたこともあったらしい。猿か軽業師みたいな仕事である。


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